美容室で倒産防止共済(経営セーフティ共済)の注意点@REPSS下道
法人の美容室で決算前に利益が出ている場合に、税理士さんから「倒産防止共済」という制度を勧められた事はありませんか?「倒産防止共済」とは、別名「経営セーフティ共済」と同じ意味です。
このセーフティ共済は、しっかり考えて取り入れるのであれば、とってもいい制度だとは思いますが、税理士さんに言われたから加入するといった感じですと、いずれ「どーしたらいい?」と考えてします事もあると思います。むしろ、その声を多く聞きます。めちゃくちゃオススメ!という訳ではありませんが、知っておいて良いと思います。
さて今回は倒産防止共済について考えてみましょう。
美容室での倒産防止共済(経営セーフティ共済)
まずこの制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構という漢字が羅列した場所での管轄なのですが、早速ページを見てみましょう。
なるほど!税理士さんが勧めそうな内容になっていますね!ポイントを押さえておきましょう!
◯掛金が100%戻ってくる!(一定の要件があります)
◯掛金が全額経費!
この内容だけなら確かに良い!
美容室で利益が出た場合、美容室社長さんにとって税金は本当結構くるなぁ、、、と感じる方も多いでしょう。税金を払うために仕事しているみたいだ、、、と感じる方も多いかもしれません。
売上の大半は現金商売である美容室において、現金の有無は心の安定剤でもあるでしょう。その現金が、融資(借金)を受けての安心材料ではなく、自己資金での現金ならより安心感も安定感もあるでしょう。現金を残すという事と、節税をするという事は似て異なる要素が含まれているので注意したいところです。
美容室に倒産防止共済?
税理士さんや知り合いの美容室社長からは聞いた事があるかもしれませんが、倒産防止共済について解説しておきますね。経営セーフティ共済という正式名称ですが、倒産防止共済という名の方が聞いた事があるかもしれません。あくまで共済制度ですが、一時的な節税には効果があると思います。
美容室の様な現金商売ですと売掛金自体があまりないので、共済的(保障)なメリットはちょっと薄いかもしれませんね。取引先が倒産して・・・それで困るといったビジネスモデルではないので。
倒産防止共済の共済的メリット
回収困難になった売掛金債権の額か、納付された掛金総額の10倍(最大8,000万)のどちらか少ない方の金額を、無担保・無保証人で借り入れが可能。
倒産防止共済の節税的なメリット
掛金の月額は、毎月5,000円〜毎月20万円まで選べて、その範囲内であれば増額も減額も可能。ただし手続きのタイミングがあるので少し注意が必要です。(創業2期目から加入可能です)
法人の場合は、その期の内に支払った共済掛金の全額経費に計上でき、個人事業の場合は、必要経費に算入できるので、節税効果は高いと言われています。
※共済掛金の累計金額は800万円に達するまで。
※1年間共済掛金は最大240万円(全額経費)まで。(前納(全額経費計上・必要経費算入)で先の1年分を前払いする事もできます)
倒産防止共済から一時的な資金貸付
美容室の場合、取引先企業が倒産した事による売掛金未回収事案はほとんどありませんが、倒産防止共済における「緊急資金調達」はメリットとデメリットがあるので、くれぐれも注意してくださいね。
メリットは、資金貸付に対し年0.9%の利息しかかからないところでしょう。デメリットというべきかは迷いますが、返済期間は1年間以内です。1年以内に全額の返済を行わないと、年14.6%の利息になりますので注意が必要です!まじ注意ですよ!ですから、倒産防止共済から一時的な資金調達をするのは最終手段と考えるか、タイミングを見て解約手続きも視野に入れるべきでしょうね。
倒産防止共済の解約手当金
保険業界では「解約返戻金」、倒産防止共済では「解約手当金」と言うそうです。倒産防止共済を解約した時に、掛金が100%返ってくる!というのは、いくつか条件があるので参考までに書いておきます。
○加入期間12ヶ月未満=0円
○加入期間12ヶ月以上=80%以上
○加入期間24ヶ月以上=85%以上
○加入期間30ヶ月以上=90%以上
○加入期間36ヶ月以上=95%以上
○加入期間40ヶ月以上=100%
※解約形式(任意解約・みなし解約・機構解約)によって誤差もありますので、詳しく知りたい方は資料請求なりお問い合わせをしてみてくださいね!
倒産防止共済は、一旦解約したとしても、要件にあてはまれば再度加入もできます。(共済貸付には制限があります)
美容室で倒産防止共済は使える制度か?
さて、ここからが本題です!美容室経営において、倒産防止共済は使えるか?どうか?私の主観としては、使い方とタイミング次第で「アリ」だと思います。
倒産防止共済を解約した時には「解約手当金」が振り込まれます。使い方とタイミング次第と書きましたが、油断すると全く意味ナシみたいなオチになるかもしれません。
ポイントは、支払う時は「全額経費」ということは、お金が戻ってくる時は「全額収入」になります。言い換えると、全額収入とは、利益の出ている期に(まさかしないと思いますが)解約すると、売上(収入)として加算されるという事ですね。
倒産防止共済の解約は超注意して!
加入の際に「全額経費になる!」「こりゃ良い!!」と感じるかもしれませんが、ものすごく重要な事は、その先です。皆さんに伝える単語としては「出口」とでも言いましょうか。
「出口」とは、解約した時に返ってくる現金は、全額「雑収入」になるという事です。
「雑収入」になるという事は「益金」ですから「課税対象」になるわけです。最大800万円ね。
もし倒産防止共済で、毎年240万円支払って、累計掛金を800万円まで支払ったとしたら、解約手当金は800万円(ちょこっと印紙代かかるかな??)ですから、タイミングを無視して解約をしてしまうと、800万円の益金が計上されるので、場合によっては「マジか!!」みたいな事にならないように超注意が必要です!
安易に解約すると、この800万円全額に税金が課せられます。。。理由は簡単で、800万円全額経費計上してきたのですから、受取る時には税金掛けますよって事です。つまり、無計画に行動をしてしまうと単なる「税の先送り」「税の繰り延べ」にしかならないって事なんです。800万円もの大金ですからね、使い方も慎重になってください!
倒産防止共済の解約手当金で美容室出店費用は危険です
仮にですが、解約手当金800万円を「出店費用に!」なんて考えないでくださいよ!(その期がめっちゃ赤字なら解約もアリですが)
確かに現金としての800万円は大きいですし、融資は少額で出店計画も立てるかもしれませんが、それは「現金」というキャッシュ・フローのお話ですよね。
倒産防止共済を800万円まで払ったら、ずーっと寝かしておいて、退職金として自分が貰うなら全然OKですし、むしろアリです!
800万円もの益金を原資に、仮に500万円融資を受けて、合計1,300万円で出店しようものならヤバイ。
例えばこんな感じ。
不動産取得費用:300万円
内装デザイン・施工費:600万円
器具・備品:200万円
運転資金:200万円
さて質問です!
Q:初年度に経費にできる金額はどの程度でしょうか??
A:オープンの時期であったり、不動産の礼金や仲介手数料だったり、器具や備品の金額にもよりますが、内装費や美容器具の「減価償却」を含めて考えると、初年度に経費でできる金額は、300万〜400万くらいが妥当でしょうかね。(顧問税理士さんにも聞いてくださいね)
仮に初年度の減価償却が300万円だとしたら、800万円の益金の内300万円が経費にできたと仮定すると、500万円には課税されるという感じと理解しておいてもらうと近い数字かなと思います。出店費用ですから、現金は先に払うでしょうから、後から税金が押し寄せてくるなんて事は避けたいところです。
仮に法人税が30%だとしたら、経費にならなかった500万円に対して30%の150万円が税金になりかねません。現金と税務計算は全く別物ですって事です。
倒産防止共済から800万円がある!よし出店だ!しかし実は150万円の税金(上記例の場合)。
※税金の計算や詳細は、税理士さんに必ず確認してくださいね
このシミュレーションだと、800万円に対して150万円の税金という事ですから、倒産防止共済の全額損金の「効果」は、掛金返戻率100%なんだけど、実質効果は約80%前後という見方もできるかもしれません。
倒産防止共済と生命保険
生命保険の場合、一部解約(減額)ができます。(保険種類にもよりますが)
倒産防止共済はの場合、一部解約(一部解約手当取得)はできません。(=掛金の減額などはできます)
生命保険の場合は、事業保障があります。
倒産防止共済の場合、事業保障はありません。
美容師さんには、さまざまな技術がありますよね。カットの技術、カラーの技術、パーマの技術、ヘッドスパの技術などなど。やはり我々(保険屋)にも技術があるんです。
美容室で倒産防止共済を使うなら
私のオススメは、「掛金480万円までいったらその後は最低月額でちょこちょこ続けるか費用を考えるか」とするなら、技術的にはアリです。あくまで美容業界ならですよ。
500万円以上の大金は、計画的に大きな経費がある時か、その期が大きめの赤字のタイミングでないと解約は危険です。現金化する事が危険です(当初、節税目的での加入であれば)。先にも書きましたが、退職金の一部に充当するのならアリです。
美容室経営での倒産防止共済(経営セーフティ共済)について、何となくでも使い方を分かっていただけましたか?要は「使い方」だと思います。勧められたからではなく、できれば事業計画に沿った内容で資金計画の一部に組み込むのは戦略的で良いと思います。
この記事を書いた人
- 美容業界特化型保険代理店REPSS(レップ)株式会社の取締役会長と、美容師教育プランニング・美容室事業設計のアドバイザリー業務を運営するNAPIAS(ナピア)株式会社の代表取締役をしている、下道 勝(シタミチ マサル)が、日本全国の美容業経営者に向けた、情報ブログサイトを可能な限りの範囲で更新しているブログです。 日々営業活動をしている中で、美容業経営者の「なぜ」に対し、協会認定ファイナンシャルプランナーとしての情報が満載です。 これから美容業経営者を目指す方、現在美容業経営者の方に対し、情報を発信していきます。
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