美容室で業務委託という働き方
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2018.1.4更新:美容師業務委託契約書ひな形改訂版2018年はコチラです!
美容室経営者からの質問では、雇用と業務委託では全然違うんでしょ?という様な質問をよくお受けしますので、今回のブログは、美容師さんが業務委託美容室で働くという面と、美容室経営者が業務委託美容室を経営する面の両面を考えて書く事にします。
業務委託美容室のイメージは、美容室経営者目線ではどう写っていますか?
美容室店内が散らかっているイメージでしょうか?
材料を無駄に使っているイメージでしょうか?
美容師が業務委託をする上での基礎知識
美容室が美容師さんを業務委託として募集するという事は、従業員として雇うのではなく、美容室と美容師さんとの間で取り交わす、1対1の独立した事業主としての合意契約をするという働き方の事です。
独立した事業主として、合意契約をした美容師さんは、行っておいた方が良い事がありますので、その事を列記しておきます。
個人事業の開業届出手続き
独立した美容師さんは、雇用形態の美容室の働き方とは異なり、「給与」を受け取るわけではありません。雇用をされているわけではありませんから、独立=開業という形になります。
この開業をする上で、書類として残さなければならないのが、「個人開業届け」です。
この開業届けを提出しておかないと、仕事で使った費用(経費)などは、一切経費として認められない可能性があるので、個人開業届出を提出しない事は、独立した美容師さんにとって「不利」となります。
所得税の青色申告承認申請手続き
個人開業届けと同時に提出しておきたい書類で、「所得税の青色申告承認申請」があります。
1年間の申告は、今まで年末調整などを以前のお店では行っていたかもしれませんが、それは雇用されているから、お店側(会社側)でやっていた事です。
独立したのですから、これからは自分で申告をしなければなりません。
申告をする場合に、白色申告と青色申告の2種類がありまして、美容師さんの場合は、青色申告の方が有利な方法だと思います。
青色申告にするメリットは、収入と経費をしっかり付けて(一般的には複式簿記)、損益計算書を確定申告書類に添付して、期限内に提出する事で、最高65万円の控除を受けられる事になります。
最高65万円控除が、来年度の自分が支払う税金を軽減する効果があるので、独立した美容師さんにとって青色申告制度を使わずに「白色申告」をする事が不利になる事が多いので、青色申告制度を使うべきだと思います。
美容師さんにとって、収入や経費を毎月帳簿管理していく事がとても苦手で嫌気がさす方も多いのではないでしょうか?
その場合は、「記帳代行会社」などを利用すると、「丸投げ」できます。
美容師専門の記帳代行会社を選ぶとより良いでしょう。
美容室業務委託契約書の締結
業務委託契約書とは、美容室を運営している会社又は個人と、独立した美容師さんとの間の決め事を書面にしたものが、業務委託契約書になります。
業務委託契約書は通常、美容室を運営している会社又は個人が準備します。
美容室運営会社と、独立した美容師さんとで取り交わす正式な契約書ですから、しっかりと各項目を理解する必要があります。
契約書のタイトルとして「業務委託」の契約書であれば、美容室を運営する会社又は個人が、集客を行い、その集客効果によってご来店いただいたお客様に対して、契約書に基づいて美容室運営会社又は個人から、美容業サービスを請け負い、お客様に対して美容サービスをする事で業務は完結し、その対価として「報酬」が支払われます。
美容室で業務委託契約書上の役割分担とは
美容室運営会社又は個人=集客活動をし、ご来店いただいたお客様への美容業サービスを、独立した美容師さんに依頼(外注)する会社又は個人。
独立した美容師=美容室運営会社又は個人から業務の依頼を受け、ご来店いただいたお客様への美容業サービスを行う独立した美容師。
上記項目の解釈を明確にした上で、業務委託契約書の内容を確認していきます。
美容室運営会社又は個人が準備している業務委託契約書は、各美容室において内容は違うと思いますが、主だった確認ポイントは下記の通りです。
①業務の内容
②契約期間と継続方法と契約解消の事前期間
③お客様個人情報の位置付け
④秘密保持と競業避止
⑤事故処理と損害賠償
⑥契約違約金について
⑦報酬算定基準
実際の業務委託契約書では、他の項目もまだありますが、まずこの7項目については、しっかり確認する必要があります。
スムーズな業務状態の場合は何も問題が起きませんが、小さな問題が時折大きな問題に発展する場合があります。
その際は、業務委託契約書に記載されている内容で合意契約成立している事から「知らない」では済まない事になるからです。
業務委託契約書の締結の際には、必ず2通を作成し、2通共に押印をして、美容室運営会社又は個人と、独立した美容師さんとが各1通づつ保管する様にしましょう。
美容師にとって業務委託で働くメリットとは
①独立した美容師さんとして、仕事を受ける日数や時間は、自分で決める事ができる
②集客は美容室側が行ってもらえる
③独立した美容師さんとして、将来自分のお店を持つ前の実力試しができる
④独立した美容師さんとして、将来自分のお店を持つ準備時間を持ちながら、今のお客様へのサービスを継続できる
⑤新規のお客様とマンツーマンで終始サービスができる事で、ファンを獲得し易い
美容師にとって業務委託で働くデメリットとは
①独立した美容師さんとして、届出や申告を自分で行わなければならない
②収入が不安定になる可能性がある
③ヘルプをしてくれるアシスタントは原則いない
④すでに独立した美容師さんなので、将来自分でお店を持つ際には「新規開業資金の枠」が使えないので、普通貸付となる
⑤独立した美容師さんが、将来自分のお店を持つ際の融資額が、想定より下回る可能性がある
業務委託を運営する会社又は個人として、上記の様な不安要素を持つ可能性があるので、この様な事をサポートするお店という事を大々的に発信する事で、業務委託美容室における美容師求人募集では有利になる可能性もあるでしょう。
美容室から見た業務委託美容室の運営について
雇用体制の美容室経営者にとっては、業務委託で集まる美容師さんへの先入観、忙しいだけで技術向上は難しい的な発想、低価格帯における美容技術の安売りだという考え方、などなど、様々な意見があるかもしれません。
ここ数年で一気に店舗展開してきた業務委託美容室の存在も事実としてあります。
2015年の日本男性平均収入が515万円。
これを月額で割ってみると、429,000円が総額の額面平均。
2015年の日本女性平均収入が272万円。
これを月額で割ってみると、226,000円が総額の額面平均。
男性429,000円、女性226,000円から、社会保険料・労働保険料・所得税・住民税が引かれるので、実際の手取りはここから3万円〜5万円位を引いた額でしょうか。
女性の平均「手取り」は、予測として180,000円〜200,000円くらいでしょうか。
金融資産の側面で、市場を分析すると下記の様なデータがあります。
超富裕層(資産5億円以上):0.1%
富裕層(資産1億円〜5億円):1.8%
準富裕層(資産5,000万円〜1億円):6.0%
アッパー層(資産3,000万円〜5,000万円):12.4%
一般層(資産〜3,000万円):79.7%
現実的な「お財布事情」から想定するれば、美容にお金をかけたくても、なかなか毎月難しい事が現状で、その結果来店サイクルが若干伸びてしまったり、低単価サロンに流れるという、日本の平均所得データや、金融資産データから想定できるかもしれませんね。
美容師さんとして提供したい技術サービスという、「美容師発信のビジネス」の方法と、所得市場(マーケット)に合わせた「美容室発信のビジネス」の方法は、美容室経営と美容師魂との間で、葛藤は生まれるかもしれません。
ここ数年で一気に展開したいくつかの美容室の「やり方」も凄いのですが、マーケットの見方を、男性や女性、20代や30代や40代の様な、年齢別マーケットではなく、「お財布事情」ニーズに合わせた業務委託美容室が、結果的に大きく展開したのかもしれません。
金融資産データで見ての通り、全体の約80%が一般層です。
「一般層約80%=超富裕層+富裕層+準富裕層+アッパー層の合計約20%」
という事は、日本全国の80%が一般層で、男性手取り収入「約38万円」、女性手取り収入「約19万円」なんですよね。
日本に存在する元々大きなマーケットである「一般層」に対して、市場ニーズに合った美容室の展開が、たまたま「業務委託美容室」と「業務委託美容師」の働き方が合ったのかもしれませんね。
日本における、元々大きなマーケットであるこの市場ニーズに合わせたのが、「ユニクロ」なのかもしれませんが、その「ユニクロ」でさえ「プレミアムユニクロ」の様な高単価ブランドを展開せずに、さらに市場ニーズに合わせた「GU」の展開で、大成功しているわけです。
これからの美容室を考えて、これから先も継続性があり、お客様のニーズに合わせた美容室作りの方法のひとつとして、業務委託美容室の選択のひとつかもしれません。
業務委託美容室を作るにしても、簡単な事ではありません。
本気でなければ失敗するでしょう。
このブログの過去記事で、「美容室業務委託」をまとめたブログページがありますので、お時間ある時に参考になればと思います。
美容師さんとしての考え方ややりたい事とは、相対する場合もあるかもしれませんが、美容室経営者として「どこに美容室を出店しようか」という、出店場所選びというマーケティングと同様に、「どんな美容室を出店しようか」の考え方のひとつに、業務委託美容室という考え方は、「別軸として」その地域のお客様への貢献に繋がる可能性もあるのかもしれません。
この記事を書いた人
- 美容業界特化型保険代理店REPSS(レップ)株式会社の取締役会長と、美容師教育プランニング・美容室事業設計のアドバイザリー業務を運営するNAPIAS(ナピア)株式会社の代表取締役をしている、下道 勝(シタミチ マサル)が、日本全国の美容業経営者に向けた、情報ブログサイトを可能な限りの範囲で更新しているブログです。 日々営業活動をしている中で、美容業経営者の「なぜ」に対し、協会認定ファイナンシャルプランナーとしての情報が満載です。 これから美容業経営者を目指す方、現在美容業経営者の方に対し、情報を発信していきます。
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