美容師退職金と失業保険の違い
以前に書いた「美容師退職金」記事の反響がとても大きいのですが、美容室社長と打ち合わせをしていると、退職金と失業保険の意味合いが混乱している方が多いと感じたので、今回は美容師退職金と失業保険について書いておきますね。
美容師さんの退職金
コロナで世界は変わりました。国の財政も困窮している様に感じます。老齢基礎年金の積立が足りず、厚生年金から補填するなんてニュースも最近ありました。
さて、自分たちの未来において、生活する上で必要なお金の準備について、まだ先の事と後回しにせず、今から少しでも考えておいた方が良さそうです。
経営者の退職金のみならず、従業員をひとりでも雇用している場合は、彼ら彼女らの未来を考えてあげるのも経営者の仕事のひとつだと思います。
今回は退職金について書いておきます。
美容師さんの退職に伴って支払われる退職金は大きく分けて2通り考えられると思います。
ひとつは中途退職の場合と、もうひとつは定年退職の場合。美容室ではあまり定年退職という感じは想像できないかもしれませんね。
離職率が高いとされる美容業界では、ついつい中途退職における退職金として考え易いかもしれません。
またインターネットで「美容師退職金」を検索すると、記事を書いた人が他コンテンツを収集して書き換えた様な記事を散見します。
これでは実態とかけ離れた話になってしまっているのでご注意ください。
美容師退職金は無いと違法か?
先にお勉強から!
退職金は本質的な意味では賃金の後払いなんです。日本では長く勤務してくれた従業員を対象に、その労いに対し奨励する意味合いで退職金を支払う制度としていますが、法律で退職金を定めているわけではありません。美容室で退職金制度を作らない事が違法では無いという事です。
ただし美容室の就業規則に退職金の規定をしている場合は、賃金の一部とされ、請求があった場合は退職金を支払う必要がでてきます。
美容師退職金と失業保険の違い
失業保険をもらった事はありますか?私はありません。
失業保険は、雇用保険加入者が離職に伴い失業者として登録し、求職中であり無職状態と認定された場合に支払われる給付が失業給付になります。
退職金は長年勤務してくれた労いの意味合いが強く、美容室への貢献度合いに応じて規定に沿って支払われるものです。
失業保険は雇用保険加入者が失業給付を受ける権利がある事で、退職金は規定に応じて支給されるかどうかの判断がある事の違いになると思います。
退職金はないけど失業給付はあるといった解釈は、目的も意味も異なっていて何か混乱させる表現になるかもしれませんね。
美容師退職金規定
先にも書きましたが「就業規則」に退職金についての記載がある場合は、賃金の一部とみなされ請求があった場合は支払う必要がでてきます。
では一般的にどの様な記載をしているケースが美容室では多いかと考えてみると、入社3年間や入社5年間における退職については、退職金を支払わないと規定している美容室が多い気がします。
参考までに、美容室の就業規則は社会保険労務士が作成する事が多いのですが、労働基準法が変更されたり、身近な話で言えば最低賃金が毎年上がっていく事や、産休や育休においての規定作りをしても、法律が変わる度に「アップデート」をする必要があります。
一方退職金規定は、毎年の様に大きく変更する事は稀です。勤続年数や会社への貢献度に応じて「評価」する事も多いと思います。
逆に、美容師スタッフの辞め方次第の「評価」もできますよね。
例えば「競業」に抵触するような退職であったり、「不正競争防止法」や「顧客データの盗難」などの不正行為を行った事実が証明された場合、退職金を支払わない理由も就業規則に盛り込む事もできるでしょう。
美容業界に詳しい社会保険労務士が身近にいれば相談してみてください。また、美容業界専門の社会保険労務士は紹介できるので、もし必要であればご相談ください。
美容室の退職金制度に中退共は?
中小企業退職金共済(通称、中退共)は美容業界に合うのでしょうか?(独立行政法人)
中退共の制度そのものを否定する訳ではありませんが、美容業界には私は合わない制度だと思います。
離職率が高い、独立志向が高いとされる美容業界で、言い方が難しいのですが「スタッフの辞め方に関係なく退職金が直接従業員に支払われる制度」なので、美容室社長からすると、過去の経験上この退職金制度を活用する事は、将来ストレスを感じる機会が多くなるかもしれません。
中退共はメリットもありますが、美容業界においてはこの中退共を退職金制度として活用するのは私は賛成ではありません。
ちなみに、REPSS(レップ)社は中退共を活用していません。
業務委託美容師とフリーランス美容師の退職金と失業保険
美容業界の業務委託美容師さんや、シェアサロンを利用しているフリーランス美容師さんには、退職金も失業保険も何も無い事がほとんどです。
保障を自分で作り上げるしか方法は今は無さそうです。
勤務している頃(雇用)は、結構良い環境にいた事に気が付かず、フリーになった方も多いかもしれません。
その事を感じるのは、結婚した時や、住宅ローンを組みたいと考えた時は特に感じるでしょう。
業務委託美容師とフリーランス美容師の貯蓄
業務委託美容師さんや、シェアサロンを利用しているフリーランス美容師さんは、個人で貯蓄してくださいね。
目標は65歳時点での貯蓄額は「6,000万円」くらいですが、最低でも「5,000万円」はストックした方がフリーランス美容師の方は良いでしょう。
その方法として、iDeCoやNisaはしっかり勉強してからにしましょう。
また小規模企業共済(独立行政法人)のメリットだけを信じて、例えば小規模企業共済に月額7万円の年間84万円の「所得控除」になるから「節税になる!」とその部分だけを見て進めたら危ないですからね。
参考までに、個人事業を廃業しないと、原則は解約金は戻りません。(解約方法は、任意解約と機構解約があります)しっかり理解してからでないと、自分にデメリットが襲ってきますからね。
今フリーランスで稼げている方も多いかもしれませんが、未来の保障が無い分自分自身で貯めたり保障を組んだりする必要があったり、住宅ローンを将来組みたいと考えるのであれば、美容師として住宅ローンを組む為の準備もする必要があると思います。
美容師退職金まとめ
人生100年時代とされる中で、財務省の見解では解釈違いと言い訳もありましたが、厚生年金が全期間加入している事を前提に「2,000万円不足」と発表されましたよね。
では美容師さんにとっては、将来の生活費はいくらあったら安心感があるのでしょうか?
単純計算ですがイメージでしょうか?
美容師として65歳くらいには引退してゆっくり生活がしたいと考えた場合の必要生活資金。
①65歳〜80歳(日本人男性の平均寿命は81歳です)の15年分の生活費は。
月額25万円の生活費✕12ヶ月=年間生活費300万円✕15年分=4,500万円
②65歳〜90歳の場合
月額25万円の生活費✕12ヶ月=年間生活費300万円✕25年分=7,500万円
③65歳〜100歳の場合
月額25万円の生活費✕12ヶ月=年間生活費300万円✕35年分=1億500万円
皆さんが頑張って支払っている国民年金が将来の老齢基礎年金として受給される時、いったい月に何万円支払われるのでしょうか?
政府は国の借金を今の子供たちに引き継がせようと必死だし、政治家の老後資金だけは取り崩さないように必死でしょうから、我々世代は厳しい時代を迎える事になりそうです。
何はともあれ、自分で貯めておけば心配は軽減されるって事ですよね!
美容室として、美容師として、お金の貯め方のご相談はいつでもご連絡くださいね!
この記事を書いた人
- 美容業界特化型保険代理店REPSS(レップ)株式会社の取締役会長と、美容師教育プランニング・美容室事業設計のアドバイザリー業務を運営するNAPIAS(ナピア)株式会社の代表取締役をしている、下道 勝(シタミチ マサル)が、日本全国の美容業経営者に向けた、情報ブログサイトを可能な限りの範囲で更新しているブログです。 日々営業活動をしている中で、美容業経営者の「なぜ」に対し、協会認定ファイナンシャルプランナーとしての情報が満載です。 これから美容業経営者を目指す方、現在美容業経営者の方に対し、情報を発信していきます。
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