美容室の経費「出張旅費」ひな形@REPSS下道

美容室の社長になり、美容室の経営がすこしづつ軌道に乗り始めた頃に気になる「経費」の問題。数ある方法の中で、美容室ではほとんど聞く事のない「出張旅費規定」について今回記事にしてみようと思います。

美容室経営で経費の解釈が異なる税理士の見解

美容室の経営を行っていると、こんな話を時折聞きます。

「仕事で着る服は経費ですか?」

「腕時計は経費になりますか?」

「バックやアクセサリーは経費になるんでしょうか?」

などなど。

 

この様な問いに対して、なぜか税理士さんの見解が分かれるのはなぜでしょうか?

ある税理士さんは、「いやいやダメだよ」と言う。

ある税理士さんは、「半分程度ならね」と言う。

ある税理士さんは、「仕事で使うなら経費でしょ」と言う。

 

服装に限っては「お店のロゴが入っていればね」という税理士さんもいれば、「ユニフォームなら」という見解もあったり、「裸で仕事できないでしょ?」という税理士さんもいます。

 

いったいなぜここまで税理士さんの見解が違うのかは、もしかしたら認識の違いなのか?規定などで定めていれば良いというのか?私には不明ですが、曖昧な経費計上の方法よりも、もっと正攻法で王道の「出張旅費」に関する美容室の経費については、税理士さんから教えてもらっていますか?

 

美容室の経費計上で使える旅費規定概要

旅費規定って聞いた事はありますか?

 

出張旅費規定の事を指すのですが、出張の際に交通費や宿泊代の他に、雑費の補填として支給できる「出張日当」ですが、この事を「出張旅費規定」の中に適正に定めておく事で、経費計上として役に立つ事でしょう。

 

ではいったい、美容室経営をしていて遠方への出張があるのか?って事ですが、遠方の定義を、事業所を起点に100キロと定めるなど、ある一定の距離以上への出張を定義しておきたいのです。その距離が、10キロや30キロでは、出張とは言えないでしょうね。

 

例えば講習を聞きに遠方に行く。

例えば講習をしに遠方へ行く。

コンテストの為に遠方に行く。

美容メーカー主催のフォーラムの参加の為に遠方に行く。

美容ディーラー主催のイベント参加の為に遠方へ行く。

店舗展開の視察の為に遠方へ行く。

 

想像できるケースはざっとこんな感じでしょうか?

まだ他にもあるかな?

 

美容室の経費として有効性のある規定の整備は必須ですが、出張旅費規定ひな形を書く前に知っておいて欲しいポイントがいくつかあるのでご紹介しておきますね。

 

美容室旅費規定作成のメリット

原則、法人美容室が対象です。

 

法人経営であれば、交通費・宿泊代・「出張日当」の全てが経費計上できるのですが、個人事業主(個人店経営者・業務委託美容師・フリーランス美容師)については、交通費・宿泊代の実費分だけが経費計上となり「出張日当」については認められていません。

 

残念ですが、個人事業主(個人店経営者・業務委託美容師・フリーランス美容師)の代表者分は認められませんが、スタッフ分の出張日当は認められるとの事です。

 

出張旅費規定を正しく作成した後に適用する際に、実はこの「出張日当」のスゴイメリットは、会社として経費計上できるメリットの他に、受け取る側にとって大きなメリットがあるんです。

 

なんと!この「出張日当」として手当てをもらった場合「所得税非課税」「住民税非課税」「社会保険料負担対象外」という、受け取る側のメリットも大きいのです。

そして更に、消費税も内税として受け取れるので、メリットはかなり大きいというのが、この「出張旅費規定」でしょう。

 

美容室旅費規定のポイント

美容室で旅費規定を作成して保存しておかないと、いざって時にしどろもどろになっては否認されては困りますから、やはり規定の策定は必須です。

 

旅費規定を策定する際にポイントを簡単にまとめておきますね。

 

①従業員全員に対しての規定作りをする。(法人であれば社長や役員も対象で、個人事業主の場合は従業員のみが対象)

②税務署などへの届け出は原則不要。

③旅費規定の目的を決める。

④旅費規定の定義を決める。(例えば事業所を中心とした距離の設定をした場合に、片道100キロ以上などの明記をする)

⑤旅費規定上の支給額を決める。(実費分としては、交通費・宿泊代が一般的な経費ですが、出張の際の雑費の補填としての経費を前もって決める。例えば、社長や役員の場合、出張日当10,000円で、従業員の出張日当は5,000円などの定額や、実費精算とするなどの明記が必要)

 

美容室旅費規定作成の注意点

美容室で旅費規定を作成する際に、何でもかんでも書き込んでおけばOKというものではありません。社長や役員だけとか、妥当性に欠けるとか、根拠がない旅費などは、もちろんダメですと怒られる原因です。

 

美容室での旅費規定を作成する上で、どのような事を気をつけておけば良いのかをまとめておきます。

 

①法人美容室の場合、役員全員・従業員全員を対象にしなければなりません。個人事業主で美容室経営をしている場合は、残念ですが代表者は対象外で、従業員のみが対象です。

個人事業主の代表は旅費規定(出張日当対象外)って事は、フリーランス美容師、業務委託美容師は旅費規定対象外で、出張日当の対象ではないという事ですね。

 

②出張日当支給額の妥当性として、安易に「じゃ社長は5万円」とかでは認められません。美容室経営もIT業界も建築業界も、皆特殊な業界と同業者同士の会話では出てきますが、美容室だからなどの特別扱いはなく、社会通念上で考えれば、社長や役員で出張日当5,000円〜10,000円が妥当でしょうし、従業員なら2,000円〜5,000円程度までが妥当性があると言われているようです。

 

③出張日当を支払うという事は実態が当然に必要ですよね。そこで、報告書の作成が必要です。どんな報告書を書けば良いのか?の質問であれば、「目的」「日付」「行き先」「業務内容」くらいは記録しておきましょう。

 

法人美容室旅費規定のメリット

法人で今回の旅費規定を作成しておいて、どんなメリットがあるか考えると、やはり「節税」でしょう。

 

旅費規定を作成し、社長や役員または従業員に対して出張日当を支払うという事は、法人としての現金を給与とは別に現金を動かく事のできる方法です。

 

受け取る側にもメリットが大きくて、所得税や住民税に関係なく「非課税」として受け取れますし、支払う法人と受け取る個人に対して、社会保険料も対象外というメリットも大きいでしょう。

出張が多い美容室の経営者にとっては、積み重ねとして年間経費が作れそうですね。

 

もし、出張旅費規定を作成しないで、定額などの出張日当に似た感じで支払いをした場合、「給与」に見なされる可能性が高いので、規定作成はマストです。

 

後に、出張旅費規定ひな形も書いておきますので、参考にしてみてください。

 

美容室出張旅費規定のデメリット

出張旅費規定を作成するということは、もし今期「赤字だ!」って時に、「今赤字だから払いたくない!」なんて事は難しいかもしれません。規定を作るということは、会社のルールを追加するわけですから、もしかしたら経費が膨れ過ぎて支出が増える可能性もあるでしょうね。

 

旅費規定を作り、記録となる報告書があるからといって、絶対に絶対に全額経費になるのか?と言われれば、絶対に絶対にという約束はできないでしょう。

 

税務調査などで、支給額多すぎ!とか、この出張は「カラ」?と見なされた場合は、当然の否認になるかもしれません。ですので、絶対にグレーはダメ!オフホワイトもダメですよ!

 

美容室の経費「出張旅費規定ひな形」

出張旅費規定

 

第1章総則

第1条(目的)

本規定は、役員及び従業員の出張に要する旅費に関する事項を定める。

 

第2条(旅費の種類)

前条の旅費は、出張旅費とする。

 

第3条(旅費の経路)

出張旅費は、勤務先所在地を起点として、一般的な順路によって計算するが、業務上の都合ややむを得ない理由で順路を変更する必要があると判断した場合には、現に経過した路線によって計算する。

 

第2章出張旅費

第4条(出張旅費)

出張旅費とは、役員及び従業員が出張に伴う交通費や宿泊代及び日当の事をいう。交通費・宿泊費・日当は次のとおりにする。

①日帰出張:原則として、勤務先所在地から片道100キロを越す地域への出張を対象とし、宿泊を伴わない出張の事をいう。

②宿泊出張:原則として、勤務先所在地から片道100キロ以上を越す地域への出張を対象とし、宿泊を必要とする出張の事をいう。

 

第5条(宿泊料及び日当)

宿泊料及び日当は、出張日数や宿泊日数に応じて下記に定める定額を支給するものとする。

 

資格区分:社長役員

日帰日当:10,000円

日割日当:10,000円

宿泊代:実費相当額

 

資格区分:従業員

日帰日当:5,000円

日割日当:5,000円

宿泊代:実費相当額

 

第6条(交通費)

交通費は下記の通り支給する。

①鉄道路線は、特急・指定席料金の範囲で実費分の支給とする。

②車賃は、出張中に利用したタクシー・バスその他これらに準ずる交通機関の利用について実費分を支給する。

 

第7条(旅費の支給)

旅費は(日当を除く)、帰社後に計算し支払うものとする。ただし、概算によって前渡金を受けるこ事もできる。この場合は、帰社後3営業日以内に精算しなければならない。

 

第8条(宿泊代の支給)

宿泊料は下記のとおり支給する。

①宿泊料は実費相当額を支給する。

②役員及び従業員の縁故先に宿泊した場合には、所定の宿泊料の50%を支給する。

 

第9条(日当の支給)

日当の支給は、毎月◯◯日を締めとし、翌月末までに支給する。

 

附則(実施期日)

本規定は、◯◯年◯◯月◯◯日より実施する。

 

美容室の経費「出張旅費規定」ひな形の注意点

上記の通り、出張旅費規定にひな形を「参考資料」として、書き記しました。このひな形で100%完成です!というひな形ではありませんのでご注意ください。

 

あくまで参考資料としての活用で、正しく規定するには、社会保険労務士か弁護士に相談の上で規定作成をしてください。この「出張旅費規定ひな形」を利用し、如何なる諸問題が発生しても、当方で一切の如何なる責任を負いません。自己責任と認識した上で参考資料としてください。

 

美容室の経費まとめ

法人で美容室経営をしていると、減価償却が気になったり、30万円未満の買い物探しや、経費に認められるモノで必要なモノは今期中に買っておこうと考える方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

モノに変えるという節税は、換金性が引い場合も多いのかもしれませんね。

 

例えば30年前のポルシェやフェラーリを買うとすれば、全額一括経費になるのかも?しれませんし、売却時に価格が上がったり下がったりしても、売却価格全額が雑収入になったりと、オールドカーの売買もどこかで聞いた気がします。

 

美容室経営の様に、現金商売の商いの場合やはり経営上の安心材料は「現金の有無」でしょうね。

 

現金を残す方法論は多種多様にありますが、節税をする目的があれば節税の価値もあがるでしょう。

もし節税をする目的がない場合は、節税なしに納税しますか?

特に節税の目的なんてないんだよね〜とお考えであれば、「納税の延期」という考え方もありますよね。

もちろん脱税はブラックですので完全アウトですから、合法的に「延期」をしてみたらどうでしょうか?

 

いつまで延期するか?

その目的すら見当たらない場合は、美容室経営者自身の「退職金」の積立に充ててみてはどうでしょうか?

 

経営ですから、良い時大変な時もあるのが経営ですから、美容室経営者の退職金積立をしながら、経営が大変な時にはその積立を取り崩して現金を活用するという考え方はどうでしょうか?

 

国の制度で退職金積立制度もありますが、経営困難な場面では資金繰りができない制度もあるので要注意ですが、経費化できる退職金積立は、美容室経営を継続する上で、困った時の運転資金への流用もできるし、順調に経営が軌道に乗っていけば自身の退職金にもなるという、とても合理的な方法ではないでしょうか?

 

私自身が美容業界で20年間もの間、1,000人以上の美容室経営者と今までお会いさせていただいてきて思うことは、美容業界の特徴を生かせばもっと合理的に現金は残せると考えています。

 

むしろ私が担当している多くの美容室経営者が実践している方法ですし、税務調査では1件も注意すらされた事のない方法であればご安心いただけるのではないでしょうか?

 

もしご相談があれば遠慮なくお問い合わせくださいね。

 

この記事を書いた人

下道 勝
下道 勝取締役会長兼務代表取締役
美容業界特化型保険代理店REPSS(レップ)株式会社の取締役会長と、美容師教育プランニング・美容室事業設計のアドバイザリー業務を運営するNAPIAS(ナピア)株式会社の代表取締役をしている、下道 勝(シタミチ マサル)が、日本全国の美容業経営者に向けた、情報ブログサイトを可能な限りの範囲で更新しているブログです。 日々営業活動をしている中で、美容業経営者の「なぜ」に対し、協会認定ファイナンシャルプランナーとしての情報が満載です。 これから美容業経営者を目指す方、現在美容業経営者の方に対し、情報を発信していきます。